連敗続きの習政権に新コロナウイルスの脅威
昨2019年11月24日、香港では区議会議員選挙が実施された。周知のように、同選挙では「民主派」が地滑り的勝利をおさめている。 中国共産党は、この区議会選挙でなぜか「親中派」の勝利を疑わなかった。香港の「サイレント・マジョリティ」が暴力を伴う「民主化」運動に批判的だと信じていたのである。
ところが、実際には、大半の香港人は「民主化」運動を支持していた。習近平政権は、完全に香港の状況を読み違えていたのである。そのため、「民主派」の大勝に、中南海(共産党幹部の住む地域)では“衝撃”が走ったと言われる。
まず、香港で、中国共産党は一敗地にまみれた。
次に、今年(2020年)1月11日、台湾では総統選挙・立法委員選挙が行われた。
既報の通り、民進党の蔡英文総統が順当に再選を果たしている。
実 は、選挙前、国民党は、およそ37万票の差で、韓国瑜候補が蔡総統に勝利すると予想していたという。しかし、蔡総統が史上最多票数の817万票を獲得し、韓候補は完敗した。また、立法委員選挙でも、国民党は、民進党の単独過半数の議席獲得を許した。
結局、北京政府が国民党を支援しても、徒労に終わった。習近平政権は台湾の選挙でも敗北した。香港に続いて連敗である。
更に、劉鶴副首相が米中貿易交渉のため、米国へ飛び、トランプ政権と通商交渉を行った。そして、米中は「第1段階」の合意に署名している(本来、経済担当の李克強首相が行くべきだったが、首相は、今、ほとんど権限を持たされていない)。
その合意内容だが、中国側がほぼ一方的に米国側から譲歩を迫られ、押し切られたのである。
今後2年間で、中国は、大豆や穀物、豚肉など米国産農産物を320億米ドル(約3兆5200億円)追加購入することを約束させられた。また、同国は2年間で2000億米ドル(約22兆円)相当の米国産品やサービス購入を増やすよう、米国から求められている。
他方、米国は、昨年9月に発動した制裁第4弾の税率を現行の15%から半分に引き下げる。ただし、制裁の第1~3弾は据え置く。
つまり、過去1年半に制裁対象となった中国製品、合計3700億米ドル(約40兆7000億円)のすべてに関税がかけられたままとなった。
そのため、中国のネットユーザーから、劉鶴副首相は、日清戦争後、「下関条約」を締結した李鴻章(日本に台湾を譲る)と同じだと酷評されている。
米中通商合意でも、習近平政権は米国に屈した形である。香港・台湾の選挙に続き、3連敗となった。
さて、昨年12月、湖北省武漢市の海鮮市場から、突然、新型コロナウイルス(以下、「武漢肺炎」。2002年~03年のSARSと酷似)が発症した。
その時点で、一部の医師は、この「武漢肺炎」が普通の肺炎ではなく、SARSに近いことがすでにわかっていたという。ところが、当局に逮捕・拘束されるのを恐れて、言い出せなかったらしい。
今回、北京政府の対応は、前回(SARS)時よりも多少マシだが、相変わらず、当局の情報の出し方に疑問がある。最初、中国当局は「武漢肺炎」に関して「ヒト→ヒト感染」を否定していたが、ついに隠し切れなくなり、「ヒト→ヒト感染」を認めている。遅きに失した感が否めない。
今年1月17日,世界保健機関(WHOの Collaborating Centre for Infectious Disease Modelling)と英国インペリアル・カレッジ(MRCの Centre for Global Infectious Disease Analysis)は、罹患者数は4000人程度と推計している。
そして、1月20日、習近平主席が、直接「武漢肺炎」について談話を発表した。異例の対応である。いかに事態が深刻かを窺わせるだろう。
一説には、「武漢肺炎」の罹患者中、重篤になる割合は14%、死亡率は4%だという。中国当局は感染者数が634人、死者数が17人(1月23日現在)と発表している。だが、中国共産党はしばしば過小報告する傾向がある。したがって、その数は、1桁ないし2桁異なる(多い)可能性も否定できない。
1月23日、北京政府は、とうとう人民解放軍(ないしは武装警察)を投入し、武漢市を封鎖した。同市民や滞在者は、鉄道や飛行機をしばらく利用できない。高速道路も閉鎖されたので、彼らは他地域へ行くのが極めて難しくなった。
1月25日から始まる春節(旧正月)を前にして、すでに、我が国だけでなく、香港、マカオ、韓国、台湾、タイ、シンガポール、米国にも「武漢肺炎」感染者(現時点では、ほとんどが中国人)が確認されている。今後、中国国内だけではなく、海外でも「武漢肺炎」が蔓延する公算が大きいのではないか。
今年3月の全国人民代表大会(全人代)と政治協商会議を前にして、このような状況下で、習近平主席は、その責任を厳しく問われる事は間違いないだろう。
台湾海峡両岸の選挙結果と民主主義
最近、中央人民政府駐香港特別行政区連絡弁公室(以下、中連弁)の王志民主任が事実上、更迭された。 香港では「逃亡犯条例改正」反対デモ(「反送中」デモ)が、徐々に「民主化」デモへと転化した。2017年から、王志民は中連弁のトップを務めていたが、デモの制圧までには至っていない。王はその責任を取らされたのである。
今年(2020年)1月6日、後任の駱恵寧(前山西省党委員会書記)が中弁連主任に着任した。駱主任は、王前主任よりも「強硬派」と言われる。
同月9日、早速、駱恵寧主任は、林鄭月娥(キャリー・ラム)香港行政長官と会い、香港の暴力・混乱阻止、及び秩序回復を確認した。今後は、2人で協力して香港の「民主化」デモを鎮圧して行くのではないか。
昨2019年11月24日、香港では区議会議員選挙が行われ、「民主派」が地滑り的に勝利した。18選挙区中、全選挙区で圧勝している(ただし、「離島」部で「無投票当選議員」=新界郷事委員会主席が多かったため、「民主派」議員と同数となった。そのため、17区で「民主派」が正副議長を独占したが、全選挙区制覇とはならなかった)。
それにもかかわらず、香港政府は、香港市民の「5大要求」(「逃亡犯条例改正案」だけは撤回し、デモ隊の要求を受諾)を受け入れる姿勢を示していない。中国政府が、中連弁に新主任を据えたという事は、香港の「民主化」を完全に阻止するつもりだろう。
目下、香港では、警察によって「自殺させられる」デモ参加者が多数出現している。ある調査では、昨年6月12日至から今年1月1日までに、香港で発生した自殺数は416件で、その中で“飛び降り”が全体の261件で1番多い。その次は、“溺死”で39件にのぼる。
一方、今年1月11日、台湾では総統選挙と立法委員選挙が行われた。既報の通り、香港「民主化」デモの影響を受けて、中国と距離を取る民進党の蔡英文総統が、中国共産党に近い野党・国民党の韓国瑜候補を大差で破って再選している。
選挙前、立法委員選挙では、与党・民進党の過半数割れが危惧されていた。しかし、民進党は単独過半数を獲得し、行政府と立法府の“ねじれ現象”を回避できた。
陳水扁時代(2000年~2008年)に逆戻りせずに済んだのである。かつて陳水扁総統(当時)は、立法院では少数与党で、政権運営が困難を極めた。
選挙翌日(12日)、耿爽中国外務省副報道局長は、蔡総統再選に対し日米英が祝意を示した事に関して「『一つの中国』原則に反するやり方で、強烈な不満と断固とした反対を表明する」とコメントを出した。
この香港と台湾の2つの選挙結果を見れば分かる通り、台湾海峡両岸で「1国2制度」が敬遠されているのは明らかである。あくまでも「1国2制度」は、将来「1国1制度」(香港は2047年)へ移行するまでの過渡期の体制に過ぎない。香港の状況を見ている台湾人が、「1国2制度」を受け容れるはずはないだろう。
習近平政権は、焦って香港をできるだけ早く「1国1制度」に変えようとした。これが間違いだったのである。
それに、台湾は、すでに実質的に「独立」しているし、中国共産党の押し付けようとする「1国2制度」は、台湾にとって何のメリットもない。
更に、台湾の背後には、米国が控えている。地政学的にも台湾は東アジアの要である。米国は民主化した台湾を北京には決して渡さないだろう。
さて、1番の問題は、中国共産党が民主主義の意義をまったく理解していない点ではないか。同時に、同党は民主主義を敵視し、受容するつもりはないようである。
もちろん民主主義には様々な欠陥があるが、人類の歴史の中では“比較的まともな政体”だと思われる。
残念ながら、近代中国が「半植民地化」されても、列強から民主主義を学ぶチャンスがなかった。これが中国にとっては“不幸”だったのである。
中国は現代においても、ほとんど民主主義とは無縁だったと言える。唯一、1970年代末から80年代にかけて、世界的な民主化の高まりの中、中国でも民主化運動が起きたが、89年の「天安門事件」で同国の民主化は完全に挫折した。
また、今の中国共産党は、いったん権力を掌握した以上、その権力を絶対、他者に渡さないだろう。同党の“黒歴史”が暴露され、厳しい責任追及を逃れられないからである。
結局、中国共産党幹部は、未だに「“孫子”の世界」に住んでいるのではないか。そのため、彼らは、国内外は権謀術数と疑心暗鬼にまみれた世界だと考える(一部はその通りかもしれないが)。その中で、どう生き残るかが、彼らにとって最重要関心事なのだろう。
台湾総統選挙と立法委員選挙結果分析
2020年1月11 日(土)、台湾では総統選挙と立法委員選挙が同時に行われ、即日開票された。選挙権を持つ人数は過去最高の約1,931万人で、投票率はおよそ74.9%と前回の投票率、約66.3%よりも大幅に上昇した。 結果は、選挙前の予想通り、民進党の蔡英文・頼清徳ペアが史上最高の817万票余りを獲得し、国民党の韓国瑜・張善政ペア(約552.2万票)と親民党の宋楚瑜・余湘ペア(約60.8万票)を退けた。この得票数は、2008年の総統選挙時、馬英九候補が獲得した765.9万票を50万票以上も上回った。
さて、この結果は、香港の「反送中」運動のお陰だと言っても過言ではない。台湾有権者は、中国共産党が(本来「1国2制度」下にあるべき)香港の「民主化」に対し武力鎮圧している状況を、昨年後半から見て来た。そのため、共産党と距離の近い国民党が敬遠され、同党と距離の遠い民進党でまとまろうとしたのである。
また、習近平政権が台湾を「1国2制度」での「中台統一」を求めている事に、台湾島民がノーを突き付けた。
おそらく「民主化」を求める大半の香港人もこの総統選挙での民進党大勝を喜んでいるに違いない。
一方、立法委員選挙は、選挙前、民進党の単独過半数割れが危ぶまれていた。実際、総統選挙と立法委員選挙は選挙の質が異なる。前者は、いわば「理念の選挙」だが、後者は、有権者の「実利優先型選挙」である。
しかし、総統選での蔡総統の大勝を受けて、同党が単独過半数(57議席)の61議席(前回比7議席減少)を獲得している。
民進党の陳水扁総統時代(2000年~2008年)、行政府と立法府間の“ねじれ現象”が続いた。だが、今回、民進党議員が過半数を維持したので、危惧された“ねじれ現象”は生じなかったのである。
国民党は、38議席獲得(前回比3議席増)し、第一野党の面目を保った。比例区では民進党と国民党の得票率は共に33%台だった。そのため、両党は13議席ずつ獲得している。国民党はこの部分で“健闘”した。
けれども、早速、国民党内では、大敗の責任を問う声が出た。そこで、呉敦義国民党主席と郝龍斌党副主席がそろって辞任している。
柯文哲台北市長率いる新政党、「台湾民衆党」は比例区で11.2%の票数を取り、5議席獲得した。また、民進党に近い時代力量(徐永明中央党部主席)が比例区で7.8%を得票し、3議席獲得している(前回比2議席減少)。
親民党の宋楚瑜はせっかく総統選に出馬したが、比例区の関門である5%を超える事ができず(3.7%)、議席をすべて失った(5%を突破できない政党票はすべて没収され、5%以上を獲得した政党に振り分けられる)。2000年頃、隆盛を誇った宋楚瑜の政治的影響力は完全に衰えた。
また、昨2019年8月、陳水扁元総統は、「一辺一国行動党」を立ち上げた。しかし、陳元総統は、今度の立法委員選挙で5%の関門を突破できなかった(1.0%)。そのため、政界からの引退を示唆している。
他方、昨年同月、時代力量は、柯文哲台北市長の総統選出馬をめぐり、柯市長を支持した。そこで、元ソニック (閃霊楽団)の林昶佐(Freddy Lim)は時代力量を離党した。林は、蔡英文支持を掲げ、選挙区(台北市第5区)に無所属で出馬し、国民党の有力候補、林郁方を破って当選している。
また、2016年5月に設立された新政党、「台湾基進」(陳奕齊主席で「台湾独立」を支持)のダークホース、陳柏惟が選挙区(台中第2区)で当選し、1議席獲得した。
実は、昨2019年12月31日、台湾の立法院では「反浸透法」を可決した。この法律は、中国共産党による台湾の選挙干渉を阻止する目的で作られている。どうやら、この法律も蔡総統の再選を後押しした観がある。
今回の総統選挙で、頼清徳が副総統となった。4年後、頼が総統候補となるだろう。すると、民進党の長期政権となる可能性が出てきた。
ところで、選挙当日深夜、中国で国務院台湾事務弁公室は、いかなる形式の「台湾独立」分裂活動にも断固反対するとの談話を発表した。台湾が“実質的”に「独立」している。それにもかかわらず、中国共産党は依然「台湾独立」を許さないと主張する。面妖ではないか。
また、蔡英文総統が圧勝した翌12日、中国国営新華社は総統側が不正行為等の「汚い小細工」をしたと批判している。
更に、同日、耿爽中国外務省副報道局長は、蔡総統再選に対し日米英が祝意を示した事に関して「『一つの中国』原則に反するやり方で、強烈な不満と断固とした反対を表明する」とコメントを出した。
願わくは、中国大陸でも、台湾と同じように、あらゆる首長や議員を民主的選挙で選んで欲しいものである。
ほとんど中国に経済を依存する北朝鮮
昨2019年12月22日、ホスト国から北朝鮮労働者が“追放”された。2017年、国連安保理決議2397号は、核・ミサイル実験を繰り返す北朝鮮に対し、制裁を課した。同年11月29日、同国が大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星15」を試験発射したためである。
その制裁の一つに、ホスト国が北朝鮮労働者を2年以内(2019年12月22まで)に“追放”するという条項が含まれていた。
約10万人と言われる北朝鮮労働者は、海外で貴重な外貨を稼ぐ。米国国務省は、彼らが稼ぐ収入を年間200万~500万ドル(約2.18億円~5.45億円)と推計している。
国外で働く北朝鮮労働者は、24時間セキュリティ当局の監視を受け、一日の半分以上働いても収入のほとんどは国に没収され、本人の手に入るカネはわずかである。だが、北朝鮮内では人気のある仕事の1つだという。
昨年12月初めまでに47国が提出した中間報告書では、北朝鮮へ戻った労働者は約2万3000人にのぼる。ロシアは1万8533人、クウェートは904人、アラブ首長国連邦(UAE)は823人の北朝鮮労働者を帰国させた。
また、東南アジアの国々でも、北朝鮮労働者の帰還を促した。
カンボジアでは、昨年11月30日、首都プノンペンとシェムリアップ(アンコール・ワット、アンコール・トム等が存在するアンコール遺跡群の観光地)で、北朝鮮レストラン6ヵ所が一斉に閉店されたという。タイでも11月下旬までの1、2ヵ月の間に、2つの北朝鮮レストランが店をたたんだ。
中国は安保理決議を誠実に履行するとの立場を表明しているが、北朝鮮労働者に対し、極めて“寛容”である。中国国内には、未だ約5万人近くの北朝鮮労働者が働いているという。
中国側としては、北の安い労働力を確保したい思惑がある。他方、北朝鮮側としては、同国労働者を中国で働かせて外貨を獲得したいだろう。両者の思惑は完全に一致している。
そのためか、中朝の国境の街、遼寧省・丹東市では、北朝鮮労働者が12月22日になっても、一部の労働者以外、慌てて北へ帰る様子がなかったという。
実際、就労ビザ(Z)で働いている北朝鮮労働者は、別のビザを取得すれば良い。例えば、交流、訪問、視察等のためのビザ(F)、中国が必要とする外国人高度人材や専門分野人へのビザ(R)である。あるいは、観光ビザ(L)や長期・短期留学ビザ(X1・X2)などもある。
もし北朝鮮労働者に中国在住の中国人親族家族(配偶者、父母、子女、子女の配偶者、兄弟姉妹、祖父母、孫子女、及び配偶者の父母)がいれば、彼らを訪問するためのビザ(Q1・Q2)を取得し、滞在が可能となる。
このように、中朝間には、いくらでも“抜け道”が存在する。
一方、昨2019年12月、韓国国際貿易協会は『南北朝鮮貿易報告書』を発表した。以下は、その抄訳である。
中国の北朝鮮貿易に占める割合(米ドル計算)は、2001年の17.3%から昨年の91.8%へと5.3倍も上昇した。
日本は、2001年に北朝鮮の貿易相手国中、30.1%で第1位だったが、自民党政権による独自経済制裁で2007年から貿易が停止されている。北朝鮮は、日本との貿易が急速に減少した後、韓国や中国との貿易が増加した。
2010年、韓国は、北朝鮮の貿易相手国中、25.0%で2位だったが、2016年の開城工業団地の閉鎖でほとんど貿易がストップした。
その後、北朝鮮の中国に対する貿易依存は90%に達した。2018年時点で、北朝鮮に占める貿易の割合は、インドが1.4%、ロシアが1.3%に過ぎない。
2001年から2018年の間、北朝鮮が行っている貿易の上位10ヵ国は、中国(50.3%)、韓国(17.8%)、インド(4.7%)、日本(3.4%)、タイ(2.7%)、ブラジル(2.4%)、ロシア(1.9%)、ドイツ(1.2%)、シンガポール(1.0%)、サウジアラビア(1%)の順だった。
同期間、北朝鮮の主な輸出品目は、無煙炭(18.8%)、鉄鉱石(4.2%)、男性用コート(2.1%)、および女性用コート(1.7%)である。
主な輸入品としては、原油(7.2%)、重油(3.7%)、灯油(3.6%)を含む石油製品だった。無煙炭は昨年、制裁強化の対象となった後、ランキングから消えている。
他方、時計、フェロシリコン(鉄とシリコンの合成物)、ウィッグ、射出成形機、タングステンなどの項目が輸出品目として上昇した。また、主要輸入品は大豆油、次いで窒素肥料、化学合成物、小麦粉となっている。
以上のように、北朝鮮の海外労働者が中国に集中し、かつ、北の中国への貿易依存度も90%以上となった。
マカオ返還20周年
1999年12月20日、マカオ(澳門)がポルトガルから中国へ返還されてから、すでに20年の歳月が流れた。 今年(2019年)12月、習近平主席は、マカオでの祝賀会に臨むため、同地へ飛んだ。
同月24日、祝賀会に出席した習主席は「マカオは歴史上最も良い発展の局面を迎え、マカオの特色ある『1国2制度』が成功を収めている」と祝辞を述べた。同会は、賀一誠マカオ行政長官(400人の「選挙委員会」から選出)の就任式を兼ねていた。
周知の如く、現在、中国共産党は「民主化」を求める香港に手を焼いている。だが、香港市民とは違って、マカオ市民は必ずしもマカオ政府や中国政府に対し「民主化」を求めていない。
マカオは、ひたすら経済発展だけを目指している。まさに、中国共産党にとっては、「1国2制度」の“理想的モデル”だろう。
ごく簡単にマカオの歴史を振り返りたい。
明の時代、皇帝がポルトガル人にマカオでの居留権を与え、中葡貿易の便宜を図った。ただ、明朝も後の清朝も、マカオという領土の主権をポルトガルに与えた訳ではない。
現在、中国共産党は、ポルトガルがマカオを強奪したという。1887年、「中葡和好通商条約」(翌年発効)が締結されたが、これを指す。この不平等条約により、マカオはポルトガルの領土となった。
マカオは、第2次大戦以降も、英国統治下の香港同様、ポルトガルの支配下にあった。
1974年、ポルトガルに「リスボンの春」と呼ばれる「民主化」が起きた。臨時政府を経た後、マリオ・ソアレスを首班とする左翼政権が誕生している。その時、ポルトガル政府は、海外植民地の放棄―マカオの中国への返還―を考えた。
だが、中国共産党は、マカオの扱いに困惑し、その後もポルトガルに統治を委ねたのである。実際、マカオがポルトガルから中国へ返還されたのは、その4半世紀後だった。
さて、しばしば、マカオは香港と比較される。マカオの面積(28.6平方キロメートル)は香港のそれ(1104平方キロメートル)と比べ、約39分の1しかない。
けれども、マカオの人口(約67万2000人)は、香港のそれ(約752万4000人)と比べ、約11分の1である。当然、マカオの人口密度は、香港よりもずっと高い。
他方、マカオの1人当たりのGDPは年約11万1600米ドルである。それに対し香港のそれは、約6万4800米ドルである。マカオ市民は、香港市民よりも2倍近く豊かだと言えよう。
マカオは「東洋のラスベガス」と呼ばれ、同経済は、主にカジノで潤って来た。だが、近年、マカオの経済構造は多元化し、ギャンブルへの依存度は低下しつつある。
マカオ経済全体に占めるギャンブル分野のウエイトは、昨2018年には50.5%まで低下した。そして、非ギャンブル分野(金融業、漢方医療、文化産業等)が50%近くを占めるようになった。そして、マカオ政府は、12年連続で市民に現金を配布している(今年は1人当たり13.3万円が配られた)。
元来、香港は「借りた場所、借りた時間」であった。香港は、次の地(米国・英国・豪州・カナダ等)へ移民するため、そのステップとする場所にすぎなかったのである。そのため、香港に“政治の季節”が到来するのは遅かった。
英国統治下の香港は、中国への返還直前に「民主化」が起きている。「民主化」は、最後のパッテン総督の強い願いだった。
そして、若者は、「香港人アイデンティティ」を持つようになったのである。
更に、20世紀には考えられなかった「香港民族」、「香港独立」というタームさえ出現した。
他方、マカオは、中国の「文化大革命」期に「親中派」勢力が伸張したせいか、その後、「民主化」が起こらなかった。香港とは異なり「マカオ人アイデンティティ」が芽生えなかったのである。だから、彼らは広東語を話すけれども、未だに「中国人アイデンティティ」を持つ。
ただ、マカオでもデモが発生する事もある。 2014年5月、マカオ政府高官に多額の退職金と年金を支給する法案に抗議して、2万人(主催者発表)規模のデモが起こった。その結果、マカオ政府は法案を撤回させている。
現時点では、マカオは順調に経済発展している。けれども、今後、経済が悪化した際、マカオ市民は政府に対して、どのような行動を取るのか。やはり、香港同様、「民主化」を求めるのだろうか。
習近平政権下での焚書政策
最近、中国の一部の図書館で焚書が開始されたという。今の時代に焚書とは驚きである。時代錯誤もはなはだしい。
事の発端は、今年(2019年)10月15日、中国国家教育省基礎教育課が、各関連部署に、ある通達を出した事に始まる。
「全国小・中・高校図書館図書の審査・整理について特別行動展開に関する通知」である。それは違法な本を断固として整理し、流通を止め、保管することを要求している。
もう少し具体的に言えば、国家の統一・主権・領土保全を危険に晒すような書籍、政党史、国史、軍事史を歪曲する書籍、また、共産党の宗教政策に違反する書籍、社会主義の核心価値観に合致しない書籍、偏狭な民族主義と人種主義を標榜する書籍などは、すべて整理の対象で、一掃しなければならないという。
しかし、出版物は本当に焼却されなければならないのかという疑問が残る。また、何が国家にとって危険なのか、何が歴史の歪曲なのか、何が党の宗教政策に違反するのか、何が社会主義の核心価値観に合致しないのか、その線引きが極めて曖昧である。
実際、この通達を受け、新疆ウイグル自治区イリ・カザフ自治州で、学校が生徒に対し、カザフスタンの読物を学校側に提出するよう強いられている。
他方、10月23日、甘粛省慶陽市鎮原県の図書館で焚書が始まり、65冊の書籍が焼かれた。なぜ甘粛省で焚書が始まったのか。3つの理由が考えられよう。
まず、第1に、甘粛省のトップ、林鐸(前省長。現、同省委員会書記)、あるいは慶陽市トップ・鎮原県トップ等が、習近平主席に対し、忠誠を示そうとしたのではないか。
第2に、林鐸、ないしは市県トップ等が党規約違反(贈収賄、愛人を作る等)を行った。失脚を免れるため、習主席にゴマをすり、焚書を行っているのかもしれない。
第3に、林鐸、ないしは市県トップ等が本当に「習近平思想」に傾倒し、甘粛省の人民に同思想を植え付けようとしている可能性もある。
毛主席は「毛沢東思想」をすべてではないにせよ、一部は自ら創造したと考えられる。けれども、習主席は「習近平思想」を少しでも自ら創造したのだろうか。
実は、習近平主席には、学歴疑惑がある。大学院はおろか、大学さえまともに出ていない公算が大きい。そんな習主席が「習近平思想」など、創造できるとは考えづらい。
同思想は、王滬寧政治局常務委員(復旦大学教授。江沢民・胡錦濤・習近平の3人の主席に仕える)の創造物ではないだろうか。だとすれば、それは到底、「習近平思想」とは呼べる代物ではないだろう。
さて、陳奎徳が『光伝媒』「新“焚書坑儒”と“胡錫進現象”」(2019年12月19日)で、以下のように書いている。
有名な作家の章詒和は次のように焚書を厳しく非難した。「整理の名の下、学校でスタートさせた中国文化の生命線を毀損する全国的な焚書は、全国自民代表大会において挙手で通過しなければならない。今度の焚書は、一体、誰が承認したのか?誰がサインしたのか?」。
そして、章は、雒樹剛・文化観光部部長と直接話をしたという。「図書館も本を燃やしていますが、図書館は文化部に属しています。文化部からそのような通達を出しましたか?雒部長。」と。
ところで、焚書は歴史や文化を抹殺する行為である。焚書によって、書物が焼失したら最後、後世に残すべき貴重な情報が失われる事になる。明らかに、焚書は文化を後退させる“愚策”と言えよう。
歴史上、有名な焚書事件は、秦の始皇帝による「焚書坑儒」(宰相の李斯の提言だとされる)とナチス・ドイツによる「非ドイツ的な魂」に対する抗議運動である焚書が挙げられるだろう。
また、中国では「反右派闘争」時や「文化大革命」時、一部焚書が行われたという。
現在、中国共産党は、何のために焚書を行っているのか。国内に「習近平思想」を流布させるためか。それとも、他に書物があると同党の存続に都合が悪いのだろうか。
仮に、今後、中国全土で焚書の嵐が吹き荒れれば、貴重な書物が大量に焼失するだろう。中国共産党は、このようなイデオロギー優先政策で、本当に米国に追い付き、追い越せると考えているのだろうか。大きな疑問符が付く。
元社員拘束で暴露された華為のブラックぶり
現在、中国では奇妙な数字の羅列「985、996、035、251、404」が注目されている。これは、華為技術有限公司(従業員18万人以上の大手電子機器メーカー。以下、ファーウェイ)を揶揄した数字である。
第1に、985とは、エリート大学を意味する。1998年5月、当時の江沢民政権は985工程(プロジェクト)を立ち上げた。そして、中国の将来を担う重点校を定めている。
第2に、996とは、就業時間が午前9時から午後9時までで、週6日働かなければならない。
第3に、035とは、35歳前後に、退職を余儀なくされる。
第4に、251とは、元社員が刑務所で拘束された日数を指す。
第5に、404とは、ネットで元社員の事件を調べようとしても、内容が削除されているため検索できない。
すでに報道されている通り、昨2018年12月16日、同社の元エンジニア、李洪元(42歳)が警察に拘束された。翌19年1月22日、李はついに逮捕される事態に至った。
李洪元はファーウェイで13年働いている。離職する際、ファーウェイ幹部と補償金と退職金の交渉を行った(退職金は30万元<約470万円>)。すると、ファーウェイ管理者は「李洪元が会社から補償金と退職金を騙して巻き上げた」として警察に訴えたのである。
結局、李洪元は警察に251日拘束されている。だが、深圳検察院は証拠不十分で、李を起訴できずに釈放した。
実は、ファーウェイは、李洪元以外、少なくても20人以上の元社員に罪を被せ、迫害したという事実が暴露された。その中には、2年の有期刑に処された者もいるという。
たまたま、李は録音テープで当時の状況を記録していた。そのため、起訴を逃れている(その後、李は、今度は国に拘留期間中の賠償金<10万元〔約156万円〕>を求めた。そのせいか、12月9日、李は深圳検察院に恐喝罪等で起訴された)。
ファーウェイは従業員持株制による民間企業と謳っているが、実態はブラック企業だったのである。ネットユーザーらはこのスキャンダルを知り、反発した。そして、同社は企業イメージを大きく損ねている。
1987年、ファーウェイは人民解放軍で働いていた任正非(CEO)が設立した。本社は深圳市竜崗区にある。よく知られているように、同社は中国ネット企業大手BATH(百度・アリババ・テンセント・ファーウェイ)の一角をなす。
ファーウェイは、5G等の先端技術を持ち、米国の牙城を脅かしている。おそらく北京政府の支援を受けている事は間違いないだろう。
他方、同社は、スマホ等の電子機器端末にスパイウェアーを忍ばせたと疑われている。そのため、米国は同社に対し厳しく対応している。
さて、米国在住の評論家、陳破空は『ラジオ・フリー・アジア』「(仮訳)孟晩舟のイメージが崩れ、中国共産党の“愛国主義”という絶対ブランドが失効」(2019年12月10日付)の中で、以下のように指摘した。
昨年12月、カナダ当局は、米国の要請に従い、ファーウェイの副会長兼CFOの孟晩舟を拘束した。
その際、中国ネットユーザーらは、北京の論調に従い、孟晩舟を「民族英雄」と称え、ファーウェイを「民族ブランド」と奉った。そして、彼らは、孟逮捕は「米帝国主義」による弾圧だと激しく非難している。
その後まもなく、孟は、勾留場から保釈金を支払い保釈され、監視付きながら、カナダの豪華な自宅へ戻った。
近頃、孟晩舟はカナダで拘束されてから1年経ち、自らの気持ちを公開した。それは、自分を支えてくれた周囲の人々やネットユーザーに礼を言うためだった。だが、これが思わぬスキャンダルとなる。
多くのネットユーザーは、孟晩舟が美しくファッショナブルなドレスで自由に街を闊歩し、また、駐カナダ中国大使から慇懃なる慰問を受ける姿を見て、反発したのである。
かつて孟晩舟は、「ファーウェイのプリンセス」というイメージを持っていたが、それは完全に崩れ去った。
「李洪元事件」と孟のスキャンダルでファーウェイのイメージは地に堕ちたと言っても過言ではない。